この章では「基本設定」と呼ばれている内容についてすべてを見直します: ネットワーク、言語とロケール、ユーザとグループ、印刷、マウントポイント、などです。
フランス語を使ってシステムをインストールした場合、既にフランス語がデフォルト言語になっているかもしれません。しかし、インストーラが言語を設定する際にやっている事を知っておくべきです。そうすれば後々必要になれば、言語を変更する事ができるからです。
ロケールとは地域に関する設定項目のグループです。設定内容にはテキストの言語だけではなく、番号の表示書式、日付、時間、通貨、アルファベット比較則 (アクセント付き文字を使う言語では適切な設定が必要) が含まれます。各パラメータは独立に設定できますが、通常は同じロケールを使います。ロケールとは広い意味で「地域」に関連するパラメータの値の組の事です。ロケールは通常 language-code_COUNTRY-CODE
の書式で表され、文字セットとエンコーディングを表すためにサフィックスを付けられる場合もあります。こうすることで、共通の言語を異なる地域で使う場合の、慣習や書体の違いを考慮する事が可能になります。
locales パッケージには、様々なアプリケーションの「地域化」を適切に動作させるために必要なすべての要素が含まれます。インストールの最中、locales パッケージはシステムでサポートしたい言語を選択するよう求めます。システムでサポートされる言語を変更するには、root で dpkg-reconfigure locales
を実行してください。
最初の質問では、サポートしたい「ロケール」を選択します。すべての英語ロケール (つまり「en_US
」で始まるロケール) を選択するのが合理的です。外国人ユーザがマシンを使う場合、ためらわずに他の言語を選んでください。システムでサポートされるロケールのリストは /etc/locale.gen
ファイルに保存されています。このファイルを手作業で編集する事も可能ですが、変更が終わったら locale-gen
を実行するべきです。locale-gen
は追加されたロケールを動作させるために必要なファイルを生成し、古いファイルを削除します。
2 番目の質問は「システム環境のデフォルトロケール」と銘打たれ、ここではデフォルトロケールを選択します。アメリカ合衆国では「en_US.UTF-8
」を選ぶ事を推奨します。イギリス英語話者は「en_GB.UTF-8
」、カナダ人は「en_CA.UTF-8
」またはフランス語の「fr_CA.UTF-8
」のどちらかを好むでしょう。そして、デフォルトロケールを保存する /etc/default/locale
ファイルが修正されます。これ以降、設定されたデフォルトロケールがすべてのユーザセッションに適用されます。なぜなら、PAM が LANG
環境変数内に /etc/default/locale
ファイルの内容を代入するからです。
キーボードレイアウトの管理方法がコンソールとグフラフィカルモードで違っていたとしても、Debian では両方を設定可能な単一の設定インターフェースが提供されています: そのインターフェースは debconf に基いており、keyboard-configuration パッケージで実装されています。キーボードレイアウトをリセットする際には、dpkg-reconfigure keyboard-configuration
を使います。
質問に関連する要素は、物理キーボードレイアウト (アメリカ合衆国で使われる一般的な PC キーボードの場合「Generic 104 key」)、選択したレイアウト (通常「US」)、AltGr (右 Alt) キーの場所です。最後に「Compose キー」として使うキーが質問されます。このキーはキーストロークを組み合わせて特殊文字を入力する際に使われます。
Compose ' e をタイプすると、アクセント付き e「é」が入力できるはずです。キーストロークの組み合わせは
/usr/share/X11/locale/en_US.UTF-8/Compose
ファイル (または、
/usr/share/X11/locale/compose.dir
に書かれた現在のロケールに従って定義された別ファイル) に記述されています。
ここで述べたグラフィカルモードのキーボード設定によって影響を受けるのはデフォルトレイアウトだけです; GNOME と KDE 環境では、環境設定の中にキーボードコントロールパネルがあり、これを使うことで各ユーザが固有のキーボードを設定する事が可能です。特別なキーの挙動に関する追加的オプションをこのコントロールパネルから設定できます。
UTF-8 エンコーディングのような一般化は、相互運用性の多くの困難を解決できるとして、長く待ち望まれていました。なぜなら、一般化することで、国際交流が簡単になり、文書で使うことのできる文字を好き勝手に制限する必要が無くなるからです。こうすることによる欠点の 1 つが、辛い移行期間を切り抜けなければいけない点です。移行期間は完全に透過的にできない (つまり、全世界で同時に移行する事はできない) ため、2 つの変換操作が必要です: 1 つがファイル内容で、もう 1 つがファイル名です。幸いなことに、この移行はほとんど完了していますが、参考までに大筋を議論します。
ファイル名だけについて言えば、移行は比較的単純です。convmv
ツール (同名のパッケージに含まれます) はこの目的専用に作られました; これはファイル名をあるエンコーディングから他のエンコーディングに変更します。このツールの使い方は比較的単純ですが、意図しない変換を避けるために 2 段階に分けて行う事を推奨します。以下の例では、ISO-8859-15 でエンコードされたディレクトリ名を含む UTF-8 環境で、convmv
を使ってディレクトリ名をリネームする方法を示しています。
$
ls travail/
Ic?nes ?l?ments graphiques Textes
$
convmv -r -f iso-8859-15 -t utf-8 travail/
Starting a dry run without changes...
mv "travail/�l�ments graphiques" "travail/Éléments graphiques"
mv "travail/Ic�nes" "travail/Icônes"
No changes to your files done. Use --notest to finally rename the files.
$
convmv -r --notest -f iso-8859-15 -t utf-8 travail/
mv "travail/�l�ments graphiques" "travail/Éléments graphiques"
mv "travail/Ic�nes" "travail/Icônes"
Ready!
$
ls travail/
Éléments graphiques Icônes Textes
ファイル内容については、既存のファイルフォーマットの多様性のため、変換手順はより複雑です。幾つかのファイルフォーマットはエンコーディング情報を含んでおり、そのフォーマットを取り扱うソフトウェアの仕事を楽にします; この場合、ファイルを開いて UTF-8 エンコーディングを指定して再保存するだけ十分です。その他の場合、そのファイルを開く際に元のエンコーディングを指定 (形式に従って ISO-8859-1 や「西欧」、ISO-8859-15 や 「西欧 (ユーロ)」など) しなければいけません。
単純なテキストファイルの場合、recode
(同名のパッケージに含まれます) を使えば自動的にエンコーディングを変換できます。このツールは数多くのオプションを備えていますので、いろいろ試してみてください。recode(1) man ページ、recode info ページ (より詳しい) などの文書を調べる事もお勧めします。